アマゾンジャパンが電子書籍定額読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドル・アンリミテッド)」を、8月にも日本で開始することが、複数出版社への取材で明らかになった。日本では電子雑誌の読み放題サービスが市場を拡大しているが、国内最大規模の電子書籍配信事業者による、書籍、雑誌、コミックスを含めたサービスの影響が注目される。
利用者が月額980円の料金を支払うと、同サービスに参加するKindle版の電子書籍・雑誌・コミックスなどが読み放題になる。
via:アマゾンジャパン、読み放題サービス8月開始へ:メディア産業の総合専門紙-文化通信
Kindleを保有しているユーザーならご存知ですが、1ヶ月に1冊だけ電子書籍をタダで読めます。
タダという恩恵は強烈でいつもどれにしようかワクワクして悩んでいました。
それが、なんとAmazonが月額980円で電子書籍の読み放題を日本でもはじめるかもしれないとのこと、、
なぜAmazonがこのサービスを日本でも始めようと考えたのか仮説を立てる
外部環境の変化
以下の記事が参考になります。
電子書籍のタイトル数が少なすぎる
(2)電子書籍専用端末がまったく普及していない
(3)著作権処理が煩雑で手間がかかりすぎる
(4)出版社側に著作隣接権がない
(5)紙に比べ電子書籍の価格にお得感がない(価格決定権の問題)
(6)フォーマットが乱立し電子書店ごとに異なる
(7)流通を阻害している厳しいDRM規制があるvia:なぜ日本は「電子書籍の墓場」なのか(上) | 紙メディア VS ネット 最終決戦 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
つまり、今まで電子書籍が爆発的に普及しなかったのは大きく以下の問題があります。
- フォーマットがバラバラ(楽天、Amazon、その他)
- 提供業者ごとに互換性がない(本の種類によって購入先を変えなければならない手間)
- 電子書籍なのにお得感がない(紙並みの値段が多い)
ネット世界で爆発的にサービスを普及させるにはユーザーの数が不可欠です。
ユーザーが増えれば増えるほど利便性が増し、コンテンツも増え、サービスも充実していく。コンテンツが増えれば、その市場は魅力的になり、本を仕入れる売り手側の交渉力が下がるため、仕入れ価格も抑えられる。
結果としてユーザーに良質なサービスが提供できていき、利用者はある時期を境にウナギのぼりに増えていくというビジネス構造です。
ネットワークの外部性と言います。
分かりやすい事例は携帯電話とかですね、みんなが持っていなければ話せませんからね。普及しなければ多様なサービスは生まれなかったでしょう。
◯人口動態の変化
少子化、高齢化によりそもそも本を買う人の母数が減っていっていること。事実出版業界は減収減益がほとんどですね。
◯経済
円高、デフレ、イギリスユーロ離脱、日本経済は低迷が続いています。「お金を何に使うのか?」という点で書籍は「大切だけど、今絶対に必要ではないもの」というように生活水準が厳しいときは消費が抑えられてしまう品の1つですね。
◯テクノロジーの発展
スマホが普及し、限定的ですが無料でも漫画や本がある読める時代。個人出版も容易で、出版社のしがらみを超えて自費でAmazonに出版することも可能。
一冊の本を読ん持ち歩く時代から、100冊の本を持ち歩き何時でも参照できる時代へと
業界はどうだったのか?
電子書籍を見るためのデバイスの価格を下げたり、無料で配布したりと読める「箱」の普及に努め、読めるアプリの拡充、コンテンツの増加、コミックだけなどニッチに市場を責めたり、新規参入してユーザーを獲得できずに去っていく企業も多い。
そんな中、ユーザーの希望である「安くて、多くの本を読みたいだけ読む」というニーズに応えられる企業は今まで1つも存在しなかった。
その電子書籍業界で戦うべき土俵は「値段を気にせず、読みたい本を読みまくれるコンテンツを提供できる」ということになる
Amazonはその外部環境の変化を受け止め、自社の内部環境をどのように変化させればその土俵で勝てるのか勝負に出てきた
値段を気にしない→月額980円
コンテンツが十分に揃っている→Amazonの交渉力と資本力
デバイスに依存しない→Kindleアプリはすべてのデバイスに対応
この3つを満たせば、Amazonは
「値段を気にせず、読みたい本を読みまくれるコンテンツを提供できる」
土俵で勝つことができ、顧客の「安くて、多くの本を読みたいだけ読む」というニーズに応えることができます。
この勝負のキモ
Amazonがどれだけ資本を投入し、売り手(出版社)に対して影響力を及ぼし月額980円で読める本をアメリカ並みの60万冊超揃えられるのか?
という点ですね。
これがサービス開始時に達成されていれば、破壊的イノベーションが起き、アップルのような革命が起きるでしょうね。
出版社や作家はどうなのか?
まず、月額980円という定額で、本来買われるはずだった「本」が売れなくなります。
その分作家や出版社の取り分が少なくなり、積極的に執筆してしなくなってしまうのでしょうか?
おそらくならないでしょう。
理由は1つ
作家は書くことが好き
ということです。
しかし儲からないとなると、その隙間で儲けさせる仕組みを作るベンチャーが出てくるかもしれません。
そもそも出版社から出しているから出版社にマージンを取られているだけであって、自分にプロモーション能力と、コンテンツ能力があれば出版社を通さず自分で電子版を発行して食べていけば良いのです。
ただし、作家は書くことに集中したいため、その作家たちが電子業界でもストレスなく出版できるプラットフォームが必要になるでしょう。
そのプラットフォームを作り出す企業は必ず訪れます。
出版社はどうなるのか?
紙に依存し続けるのは危険です。Amazonが巨大ネットワークを作り出してしまえば、本の価値自体が破壊され、本自体がまったく別のものとして扱われてしまうでしょう。
とは言っても、紙にはまだまだ根強い人気があり、すべての人間がAmazonを使うわけではありません。
そういった、紙を大切にしていく限られたマーケットをいかに獲得していくのか?どう魅力的市場を維持し続けるのか?という点が重要かもしれません。
紙の書籍は製品ライフサイクルで言うと「金のなる木」を通り越して「負け犬」に向かっています。
まだまだ相対シェアは紙の方が高いですが、Amazonの起こすイノベーションがその相対市場シェアの構図を大きく変えてしまうかもしれません。
今後戦うべき土俵はどこなのか?
顧客のニーズは何か?
紙の本を生き残らせるセグメント、ポジショニング、ターゲティングはどこか?
それを深く考えマーケティングしていかなければ生き残れないと思います。
リーマンショックならぬ出版社ショック
8月以降のAmazonの動きに注目です。
さいごに
もし、Amazonが破壊的イノベーションを引き起こしてくれたら本を読みまくれる人が増えるでしょう。
そんな時に隙間時間を使ってこんな方法で本と向き合ってみてはどうでしょうか?
ライフスタイルのイノベーションをご紹介します。
Posted from するぷろ for iOS.