高さ2cm弱、幅4cm程度、三本の指でそっとつかめて口の中で幸せをほどけさせる日本が誇る料理"寿司"。ほんの一口で人を幸せにする技術は 生半可な修行では身につけられない。「思い」をそれに握りこめるようになるためには苦行の一言だ。
生 まれも育ちも、徒歩10分で海、という環境だった田舎者の私が、今夜始めて東京銀座で「寿司」を食した。立地も、内容も、値段も一級品だ。親
戚のつてでなければ到底そこに行きつくことはなかっただろう。「寿司」も含め「おいしさ」とは何なのか、ここまで神妙に考えさせられる場所に来たのは初め てだった。
海 が近かった私は、当然ながら子供のころから「海」にまつわる遊びに明け暮れていた。釣り、素潜り、漁など、環境に恵まれていたせいか、子供の
から格別に新鮮な魚介類を食しまくっていた幸せな奴だ。そんな私も寿司を知ったのは小学生。酢飯と、魚の絶妙な表現力に驚かされた衝撃は今でも忘れない。
「類 まれない技術」。その結晶を感じるには「寿司」という料理ほど最高のものはないだろう。それを表現する付加価値として「銀座・職人・空間」
というものはより商品をプレミアムなものにする。当たり前のように新鮮な魚を食してきたが、ひとたび「ブランド」が加わると価値は跳ね上がる。「味」以上 にここに至る「思い」を感じた。